高齢になると、腰痛に悩む人が増えてきます。
腰痛は、高齢者にとって寝たきりの原因にもなりうるため、早めの対策が大切です。
腰痛の症状や主な原因
腰痛の症状は、痛みやしびれ、だるさなどさまざまです。
高齢者の腰痛症状は、若年者と比べて以下の特徴があります。
- 慢性的な痛みが多い
- 急性期に痛みが強く、長引く
- 脚のしびれや痛みを伴うことが多い
主な原因は、急に痛みが出てきた急性腰痛と慢性的な腰痛と分けてご説明します。
急性腰痛(ぎっくり腰等)の場合
急性腰痛(ぎっくり腰)は、高齢者の腰痛の約25%を占めるとされています。
急な動きや無理な姿勢によって、突然激しい痛みが起き、動けなくなるのが特徴です。
筋肉や椎間板、関節を損傷して起こる腰痛です
筋肉の損傷は、重い物を持ち上げたり、くしゃみや咳をしたりしたときに、腰の筋肉が急激に伸び縮みして起こります。
椎間板の損傷は、腰の骨と骨の間にあるクッションの役割をする椎間板が、外部から強い力を受けて損傷することによって起こります。
関節の炎症は、腰の関節に炎症が起こることで起こります。
急性腰痛の治療
急性腰痛の治療は、安静と鎮痛剤が基本です。
痛みが強い場合は、腰を固定して痛みを軽減するコルセットやサポーターを使うこともあります。
安静は、痛みが軽減するまで、できるだけ動かないようにすることが大切です。
鎮痛剤は、痛みを和らげるために使用します。
慢性腰痛の場合
高齢者の腰痛の約75%を占めるとされる慢性腰痛は、数週間~3ヶ月以上続く腰痛のことです。
加齢や運動不足、姿勢の悪さなどが原因で起こります。
慢性腰痛の症状
- 鈍痛で動けないほどの痛みではないが奥の方で痛みを感じます。
- 痛みは、長時間の立位や歩行で強くなります。
- 痛みは、安静にしている時や寝ているときも続くことがある。
- 脚のしびれや痛みを伴うことがある。
慢性腰痛の主な原因
加齢による骨の変形や骨粗鬆症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、腰椎椎間板ヘルニアなどの病気が原因で起こる腰痛です。あとは筋力低下により自分の身体を支える事ができなくなり疲労が原因で起こる腰痛もあります。
加齢による骨や軟骨の変形は、高齢者に多い慢性腰痛の原因です。
骨粗鬆症は、骨がスカスカになって、骨折しやすくなる病気です。
椎間板ヘルニアは、腰の骨と骨の間にあるクッションの役割をする椎間板が、破裂して神経を圧迫することで起こる病気です。
腰部脊柱管狭窄症は、腰の脊柱管が狭くなることで、神経が圧迫されて起こる病気です。
筋力低下は自宅での運動量が低下し、外に出る機会が少なくなり、座ったり、寝てばかりしていると著しく進みます。
内臓の病気が原因で腰痛が出る場合があります
腎臓や尿管の結石、腎盂炎、膀胱炎、子宮内膜症、卵巣炎など、内臓の病気が原因で起こる腰痛です。
慢性腰痛の治療
慢性腰痛の治療は、薬物療法、理学療法、手術療法などがあります。
慢性腰痛は、長引くと生活の質が低下し、寝たきりになる可能性もあります。
早期に治療を受けることが大切です。
●薬物療法・・・鎮痛剤や筋弛緩剤などの薬を服用。
●理学療法・・・ストレッチや筋力トレーニングなどの運動療法を行う。
●手術療法・・・重症の場合は、手術で痛みや神経の圧迫を解消する。
高齢者に起こりやすい主な腰痛
高齢者に起こりやすい主な腰痛は、以下の3つです。
変形性脊椎症
変形性脊椎症は、高齢者に起こりやすい腰痛の原因のひとつで、加齢や生活習慣の乱れなどによって、腰の骨や軟骨が変形する病気です。
変形性脊椎症の症状がひどい場合は、歩行や立ち上がるのが困難になるなど、日常生活に支障をきたすことがあります。
また、重症になると、手術が必要になることもあります。
高齢者は、腰痛がある時は無理に動かずに安静にして、痛みが軽減してから無理のない範囲で動くようにしましょう。動けるようであればできる限り休み休みでもよいので散歩などをすることは重要です。
腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症は腰の骨や軟骨が変形して、脊柱管が狭くなり、神経を圧迫することで、腰痛や足のしびれ、歩行困難などの症状を引き起こす病気です。
高齢者に起こりやすい腰痛の原因のひとつで、60歳以上の高齢者の約10%が腰部脊柱管狭窄症と言われています。
歩行や立ち上がるのが困難等、腰部脊柱管狭窄症の症状が現れた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
脊椎圧迫骨折
いつのまにか骨折などテレビでも言われているように、軽微な動きでも起こることがあり、加齢や転倒、交通事故での外傷、骨腫瘍などによって椎骨が圧迫骨折や腰の骨が潰れることで、腰痛や背中の痛みを引き起こす病気です。
ひどい場合は、歩行や立ち上がるのが困難になるなど、日常生活に支障をきたすことがあります。
脊椎圧迫骨折の予防には、骨粗鬆症の予防や、転倒や交通事故などの外傷に注意することが大切です。
特に高齢者は、バランスのよい食事を心がけ、適度な運動をすることも大切です。
すぐに病院に行った方がいい危険な腰の痛み
以下の症状がある場合は、すぐに病院を受診しましょう。
放置すると重症化したり、神経や臓器の損傷が進行していて命にかかわることもあるため、早めに病院を受診することが大切です。
- 突然の激しい腰の痛み
- 腰の痛みや麻痺で歩行困難になる
- 排尿や排便の障害
- 横に寝ていても腰の強い痛みがある
- 腰痛が数週間以上続く
- 腰痛だけでなく、発熱や吐き気などの症状がある
- 排尿時や尿意をもよおしたときに痛みが強くなる
高齢者でも楽にできる腰痛予防
高齢者でも、簡単にできる腰痛予防の方法があります。
体操を行う時の4つの注意点
1)自分の体力や体調に合わせて無理しない
体操を行うときは、無理をせず、自分の体力や体調に合わせて行うことが大切です。
痛みを感じたら、すぐに中止しましょう。
また、体操後には、体を休ませましょう。
2)ゆっくりと行う
体操は、ゆっくりと、丁寧に行うようにしましょう。
急激に動くと、腰を痛めてしまうことがあります。
3)呼吸を止めない
体操中は、呼吸を止めないようにしましょう。
呼吸を止めると、力が入らず、腰を痛めてしまうことがあります。
4)毎日続ける
体操は、毎日続けることが大切です。
毎日続けることで、腰周りの筋力や柔軟性が向上し、腰痛の予防に効果的です。
体操のやり方
体操を行う前に、ウォーキングやストレッチなどで、体を温めてから行うと、より効果的です。
寝たまま行う
寝たままできる体操は、高齢者でも無理なく行うことができます。
仰向けで行う体操は、腰に負担をかけず、無理なく行うことができます。
具体的な体操としては、以下のようなものが挙げられます。
1日3回程度、1回につき左右の足で10回程度を目安に、ゆっくりと行うといいでしょう。
両足を上げ下げする 1.仰向けに寝ます。 2.両足をゆっくりと床から上げます。 3.10秒間キープします。 4.ゆっくりと両足を床に下ろします | 両足を上げ下げする体操は、腰周りの筋肉を鍛える効果があります。 |
両膝を抱える 1.仰向けに寝ます。 2.両膝を抱えます。 3.10秒間キープします。 4.ゆっくりと両膝を解きます。 | 両膝を抱える体操は、腰の柔軟性を高める効果があります。 |
足首を回す 1.仰向けに寝ます。 2.片方の足首をゆっくりと時計回りに回します。 3.10秒間キープします。 4.反対側も同様に行います。 | 足首を回す体操は、下半身の血行を促進する効果があります。 |
椅子を使って行う
椅子を使ってできる体操は、立つことが難しい高齢者でも行うことができます。
◆椅子を使って行う時の注意点
1.椅子の高さが合っているか確認する
椅子の高さが合っていないと、腰に負担がかかり、痛めてしまうことがあります。
椅子の座面の高さは、足の裏全体が床に着き、膝が90度程度曲がる高さにしましょう。
2.背もたれにもたれかからず、背筋を伸ばす
背もたれにもたれかかると、腰が曲がり、腰に負担がかかります。
背筋を伸ばして座り、体幹を意識しましょう。
3.ゆっくりと行う
椅子を使って行う体操は、特にゆっくりと、丁寧に行うようにしましょう。
急激に動くと、腰を痛めてしまうことがあります。
◆椅子を使って行う腰痛予防の体操
椅子を使って行う腰痛予防の体操の具体的な方法をご紹介します。
1日3回程度行うといいでしょう。
背伸びをする | 1.椅子に座ります。両手を頭の後ろに回し、背筋を伸ばします。 2.息を吸いながら、ゆっくりと背中を反らせます。 3.息を吐きながら、ゆっくりと背中を戻します。 |
猫背矯正をする | 1・椅子に座ります。背中を丸めて、腰を反らします。 2・息を吸いながら、ゆっくりと背中を伸ばします。 3.息を吐きながら、ゆっくりと背中を丸めます。 |
スクワットをする | 1.椅子に座ります。両足を肩幅程度に開きます。 2.息を吸いながら、ゆっくりと立ち上がります。 3.息を吐きながら、ゆっくりとしゃがみます。 |
壁を使って行う
壁を使ってできる体操は、姿勢を維持するのが難しい高齢者でも行うことができます。
◆壁を使って行う時の注意点
1.壁から適切な距離を取る
壁から近すぎると、腰に負担がかかり、痛めてしまうことがあります。
壁から10〜20cm程度離れた位置で行うようにしましょう。
2.背中を壁につける
背中を壁につけて行うことで、腰がまっすぐになり、腰に負担がかかるのを軽減することができます。
3.ゆっくりと行う
壁を使って行う体操は、特にゆっくりと、丁寧に行うようにしましょう。
急激に動くと、腰を痛めてしまうことがあります。
◆壁を使って行う腰痛予防の体操
具体的な体操としては、以下のようなものが挙げられます。
1日朝昼晩の3回、1回につき10回程度を目安に、ゆっくりと行いましょう。
壁に手をついて、背伸びをする 1.壁から10〜20cm程度離れた位置に立つ。 2.両手を壁につき、背中を壁につける。 3.息を吸いながら、ゆっくりと背中を反らせる。 4.息を吐きながら、ゆっくりと背中を戻す。 | 壁に手をついて、背伸びをする体操は、 腰を伸ばし、腰周りの筋肉をほぐす効果があります。 |
壁に手をついて、スクワットをする 1.壁から10〜20cm程度離れた位置に立つ。 2.両手を壁につき、背中を壁につける。 3.息を吸いながら、ゆっくりと立ち上がる。 4.息を吐きながら、ゆっくりとしゃがむ。 | 壁に手をついて、スクワットをする体操は、 下半身の筋肉を鍛える効果があり、腰痛の予防に効果的です。 |
高齢者の方にもおすすめ!中レベルの腰痛予防
中レベルの腰痛予防には、以下の体操がおすすめです。
●猫のポーズ・・・背中を丸めて、腰を伸ばす体操です。
●ヒップリフト・・・お尻を上げ下げする体操です。
●四つ這いバランス・・・四つん這いになって、片足を上げてバランスを取る体操です。
●腕立てポーズ・・・壁に手をついて、腕立て伏せをする体操です。
日常生活の腰痛ケア!腰に負担をかけないために気をつけること
日常生活の中で、腰に負担をかけないために気をつけることも大切です。
正しい姿勢を心掛ける
立つとき、座るとき、歩くときなど、常に正しい姿勢を心掛けましょう。
姿勢が悪いと、腰に負担がかかりやすくなります。
背筋を伸ばし、頭を上げ、おなかを引き締めるようにしましょう。
椅子や床に座るとき
椅子に座るときは、背もたれにもたれかかるようにしましょう。
床に座るときは、膝を曲げて、足を前に出すようにしましょう。
荷物を持ち上げるとき
重い荷物は、腰をかがめずに膝を曲げて、腰を反らさないように持ち上げましょう。
片手で持ち上げると、腰にかかる負担が大きくなります。両手で持ち上げるようにしましょう。
荷物をできるだけ体に近づけることで、腰にかかる負担を軽減することができます。
背骨を床に垂直に保つのがポイントです。
持ち上げたら、ゆっくりと下ろしましょう。
急激に下ろすと、腰に負担がかかります。
また、荷物の重さにも注意しましょう。
重すぎる荷物は、持ち上げるのが難しくなります。
無理に持ち上げようとせず、手伝ってもらったり、車やカートを利用したりしましょう。
長時間、立ち続けるとき
長時間、立ち続けるときは、こまめに休憩をとりましょう。
寝るとき
横向きに寝るときは、膝を曲げて、枕を間に挟むようにしましょう。
仰向けに寝るときは、膝を曲げて、枕を下に敷くようにしましょう。
うつ伏せに寝るときは、枕を首の下に敷くようにしましょう。
買い物のとき
重い荷物は、キャリーカートやカートを使って運びましょう。
買い物袋は、肩にかけるのではなく、両手で持って運びましょう。
草むしりなど庭仕事をするとき
長時間、同じ姿勢で作業をしないようにして、こまめに休憩をとりましょう。
腰に負担がかからないように、膝を曲げて体ごと腰を下ろして作業をし、そして腰を反らさないようにしましょう。
草むしりの道具や、草むしりをする場所にも注意しましょう。
道具は持ちやすいものを選び、草むしりをする場所は、できる限り平らな場所のみ行う方がいいです。
車の運転
運転するときは、背もたれを倒して、リクライニングを調整しましょう。
長時間運転するときは、こまめに休憩をとりましょう。
まとめ:高齢者も腹筋と背筋を鍛えて腰痛を予防しよう
高齢者でも、腰痛を予防することは可能です。
体操やストレッチを、1日10〜15分程度行い、日常生活での姿勢を気をつけることで、腰痛のリスクを減らすことができます。それでもきついと感じられる方は深呼吸から始めてみましょう。
特に、腹筋と背筋を鍛えることは、腰痛予防に効果的です。
腹筋と背筋が鍛えられると、腰を支える筋力がアップし、腰への負担を軽減することができます。
高齢者の腰痛対策として、以下の3つのポイントを押さえましょう。
- 毎日、体操やストレッチで筋力と柔軟性を高める
- 日常生活の中で、腰に負担をかけない姿勢や動作を心掛ける
- 腹筋と背筋を鍛える
これらのポイントを押さえることで、腰痛の予防や改善につながります。